ロジスティック写像の時系列





フィールドの上部をクリックすると初期点が決まります (3 点まで)。

シミュレータが現れない方は「Java実行環境について」をご覧ください。

ここではカオスをうむ簡単な写像としてロジスティック写像

xn+1=axn(1-xn)

(ただし、0 <= a <=4)
を考えます。この写像は0と1の間の実数値を引数にとり, 再び 0 と 1 の間の 実数を返す写像です。

n は離散的な時間、xn はそれに対するデータを表します。
例えば、1年ごとのある動物の個体数や、1ヵ月ごとの株価のようなものを思い浮かべれば良いでしょう。
このように離散的な時間に対するデータの変化を記述する方程式を差分方程式といいます。

ロジスティック写像自体は古くから知られていましたが、この写像がカオス的な複雑な振る舞いを示すことは、
1976 年に生物学者ロバート・メイが「ネイチャー」に発表した論文 「非常に複雑なダイナミクスを有する簡単な数学モデル」によって
広く知られるようになりました。

まず、この写像に初期値として x0 を与えましょう。 すると、上の差分方程式に従って x1 、 x2 、 x3 …が自動的に定まります(このため、得られた時系列は決定的と呼ばれます)。
この系列 x0 、x1 、 x2 、 x3…を図形的に求めてみよう、というのが上のシミュレータです。

上のフィールドには、二つのグラフが描かれています。
y=4x(1-x)
および
y=x
です。このフィールド上でマウスをクリックすると、その x 座標が初期値として設定され、赤いポイントが打たれます。この初期値 x0 から出発してx軸に垂線をひき、放物線との交点の y 座標を見れば、そこが x1 となります。これを直線 y=x を用いて x 軸に引き戻し、同じ操作を繰り返せば x2 、 x3 も求められます。上のフィールドで描かれる色付きの線はこの操作を表しており、x20 まで求めています。

下のフィールドでは、そのようにして求めた系列を、横軸を時間ステップ n としてプロットしています。
データが時間とともにランダムに変化する様子がわかるでしょう。
このように、データ自体は厳密な法則 (方程式) に従っているにも関わらず、
長時間後の振舞いが予測不可能であるようなダイナミクスのことを一般にカオスと言います。

また、似た初期値を選んでも、時間が経つに従って系列が似ても似つかなくなっていくのが分かるでしょう。これをカオスの初期値鋭敏性またはバタフライ効果と言います。

また、上のバーを掴むことによって、パラメーター a の値を変えることができます。パラメーターの値によっては、カオスが現れず、周期解があらわれます。

ロジスティック写像自体は定量的なモデルではなく定性的なモデルですから、動物の個体数や株価などの予測に役立つわけではありません。
にもかかわらずロジスティック写像がカオス研究において重視されるのは、その簡単さとそれに基づく普遍性によるところが大きいと言えます。

ロジスティック写像の放物線は1次元のひもを「引き延ばして折り曲げる」操作を表していますが、
そのような引き延ばしと折り曲げの構造は、大気の熱対流のモデルから出発した「ローレンツモデル」や
私が扱っている「脳内ネットワークの同期モデル」など、多くの非線形モデルに登場します。 これは、ロジスティック写像が普遍性を持っていることの帰結です。

参考
  • Robert M. May "Simple mathematical models with very complicated dynamics," Nature, vol.261, 459-467 (1976).

「ロジスティック写像の分岐図」へ→

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