ローレンツアトラクターは、以下のローレンツ方程式により生成されます。
このモデルは、気象学者のエドワード・N・ローレンツが 1963 年に「大気科学ジャーナル」に発表した論文 「決定論的非周期的流れ」で用いたものであり、系はフラクタル性をもったアトラクター上に収束します。 この論文は、カオスとそのメカニズムを論じた論文としては最も早いものとされています。 なお、ローレンツより早い 1961 年に日本の工学者である上田ヨシ亮先生が ダフィング方程式におけるカオスを見出しておられましたが、発表時期は遅れました (ヨシは目へんに完)。 さらに以前には、数学者のポアンカレ (19世紀末) や工学者のファン・デル・ポール (1927 年) が カオスに気づいていたようです。詳細はカオス語録を御覧下さい。 さて、ローレンツの研究の素晴らしい所は、まだカオスについてほとんどの人が何も知らなかった時期であるにも関わらず その本質を見抜き、その後の研究の流れを決定づけるような先駆的な論文になっている点です。 彼はローレンツ方程式の解軌道の中にロジスティック写像のような一山の一次元写像を見出し、 それがランダムさの源泉であることを正しく理解していました。 また、ローレンツ方程式は大気の熱対流を表すブシネ近似のナヴィエ・ストークス方程式を変形することで得られます。 導出の過程で、ローレンツ方程式と現実の大気の熱運動とは対応がつけられなくなっているものの、 カオスが我々の住む自然界の現象をモデル化した方程式から現われた点も重要です。 つまり、我々の身の回りの風のそよぎや水のせせらぎの中にもカオスが存在しているかもしれない、というわけです。 もし大気がカオスであるとすると、天気予報が当てになるのはせいぜい短期的な予測のみであり、 長期予測などとても望むべくもない、ということになります。 これは「システムに働く力とその初期状態がわかればシステムの将来は予言できる」という それまでの物理の常識に反するものであり、大きなインパクトを社会に与えました。 有名な「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークの天気が変わる (バタフライ効果)」という言葉は、 大気の運動は初期値鋭敏性を持つカオスではないかと仮定した上での言葉です。 なお、この言葉はローレンツが 1972 年に行った講演の副題 「ブラジルの蝶のはばたきはテキサスでトルネードを起こすだろうか?」に基づいているようです。 では大気は実際にカオスなのか?ということが気になりますが、それについて語ろうとすると、 どうしても推測が多くなってしまいます。 というのも、大気の状態は場所によっても異なりますし (空間的に非一様)、 時間的にも状態が変わります (時間的に非定常)。 さらに、カオスとは異なる確率的なノイズ成分も多く含まれているでしょうし、 大気の状態を変化させる要因も沢山あります。 そのような大自由度で確率的な系の状態を解析し、さらにそれがカオスかどうかを判定することはとても難しいのです。 しかし、大気を一様と見なせる程度に狭い領域に限定し、その短期的な振る舞いがカオスであるということは 個人的にはあり得ることではないかと思います。なにしろ天気予報が当てにならないことは我々は体験から十分知っているわけですから。 その後のローレンツですが、1981 年に MIT の名誉教授となり、非線形力学の研究者である スティーブン・ストロガッツの講義に毎年ゲスト・レクチャーとして招かれていたそうです。 なお、2008 年 4 月 16 日、ローレンツはがんにより米マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅で死去しました。 Wikipedia (英語) によると、死の1週間前には共同研究者と論文を書き終えていたそうです。 さて、このページのシミュレータではローレンツ方程式が生み出すローレンツアトラクターを角度を変えて観察することができます。 赤、緑、青 の線分はそれぞれ x、y、z 軸を表します。 左から 3 つのバーで視点の角度を指定し、一番右のバーでズームを指定できます。 参考
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