2023/9/15(金) 勉強とはなんだろう




「研究」と「ものづくり」と「勉強」

前回の「学術論文を読んでみよう」にて、 すなわち、「研究 ≠ ものづくり」であることを伝えた。

では「勉強」と「研究」の関係はどうだろうか。「勉強」は「研究」と同じなのだろうか、違うのだろうか。
もちろん、「勉強」と「研究」は違う、ということは皆さん想像がつくだろう。
すなわち、「勉強 ≠ 研究 ≠ ものづくり」である。

では、「研究」をするためには「勉強」は必要ないのだろうか?
そのことについてここではコメントしようと思う。

これまで、人物認識とロボットにおいて、下記の演習を行ってもらった。 どれも「指示通りに手を動かせば誰でもできる」演習となっていたため、これらを「研究」と言うことはできない
なぜなら、「研究」には「答えの分からない問題に対し、解決方法もわからないままに取り組む」という側面があるからである。
そのため、「答え」も「解決方法」もあらかじめ全て提示されている上記の演習は「研究」とは全く異なる。

では、上の演習は「勉強」か?というとそれも違うと私は思う。
勉強とは何らかの知識や技術を習得するために主体的に行うもの」である、というのが私の考えである。
上の練習は「言われた通り手を動かすだけ」なので、名前をつけるなら「作業」になると思う。


勉強とは

では、勉強とはどのようなものだろう。

それを考えるため、前期の「今後どのような勉強をすべきか」をもう一度読み直して欲しいと思う。

さて、上記のページでは、下記の書籍を紹介し「皆さん自身で勉強を継続する必要がある」と書いた。 これらの書籍を入手し、勉強を継続した学生はどれだけいるだろうか?。
先程、私は「勉強とは何らかの知識や技術を習得するために主体的に行うもの」であると書いた。
上記のような書籍を用い、何らかの知識や技術を主体的に習得するのが勉強である

プログラミングの教科書に限らず、材料力学、熱力学、流体力学、何の教科書でも良いが、
大学の講義で、その教科書を隅から隅まで教える講義は皆無であることは、皆さんご存知だろう。
講義12回程度では、教科書を隅から隅まで教えるには時間が足りなすぎるのである。

だとすれば、教科書の内容をを隅から隅まで習得するには自分で教科書を独学で学ぶしかない。
例えば、8 月というのは講義もなく、1ヵ月完全に自由な時間がある。
1ヵ月という期間は、教科書 1 冊を隅から隅まで学ぶにはちょうど良い期間である。
プログラミングの教科書を 1 冊丸々理解すればかなりの実力がつくであろう。
そういうことをできる/したことがある、という学生はどれだけいるだろうか?

そういう意味で、ほとんどの学生は本当の勉強をしたことがないのでは?と私は思っている。

ここまでの話をまとめるとこういうことになる。 さて、ここまで解説した上で「勉強」と「研究」の関係の話に戻ろう。
皆さんが卒業論文を書くためにしなければいけないのは「研究」である。
しかし、私の研究室で卒業論文を書くためには、多くの場合プログラミングの知識が必要である。
そして、プログラミングの知識は勉強して身に付けるしかない

しかし、注意しなければならないのは「勉強 ≠ 研究」なのであるから、
いくら「勉強」をたくさんしても、「研究」は一向に進まない、ということである。

別の言い方をすれば、こういうことである。

大学院についてのコメント

ここまでで「勉強 ≠ 研究 ≠ ものづくり」という話をし、ある程度は理解してもらえたと思う。

そうだとすれば、大学院への進学に関して注意がある。ときどき、下記のような志望理由で大学院進学を希望する学生がいる。 このような理由で大学院進学を目指すのは間違っていると私は思う。

何かについて勉強したいのならば今日から勉強を始めれば良いし、
ものづくりがしたいのならば今週末にでも秋葉原に行けばよいのである。

「今」、勉強を始められない、「今」、ものづくりを始められない学生が、
1年後、急に勉強やものづくりを始める、ということはあり得ない、というのが私の考えである。



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