標準写像




standard.jarをダウンロードしてダブルクリックして実行してください (コマンドラインでは java -jar standard.jar)。

マウスをクリックすると、その点を初期点とした時間発展が見られます。
マウスをドラッグすると、表示領域が拡大されます。


シミュレータが実行出来ない方は adoptium.net からOpenJDKをインストールしてください。


このページでは、標準写像 (Standard map) という2次元の写像を考えます。

θn+1 = θn + pn modulo 2π
pn+1=pn+K sinθn+1 modulo 2π

この写像はヤコビアン行列式が1であるため、位相空間の体積(ここでは2次元平面の面積)が時間発展に伴い保存されます。
そのため、エノン写像等とはことなり、系にストレンジアトラクターは見られません。(ストレンジアトラクターが見られる為には、体積の収縮が必要)

このように、位相空間の体積が保存される系は「保存系」と呼ばれ、保存されない「散逸系」と区別されます。
この保存系において特徴的に見られるのは、「不変トーラスの破壊」、「トーラスの島の形成」、「カオスの海」などです。それを上のシミュレータで見てみましょう。

まず、上に現れている数字(0.1)はパラメータKの値です。このKは「非線形性の強さ」を表すパラメータです。0.1 という値はそれほど非線形性が強くありません。 ここで「Random」ボタンを押してみましょう。平面上にランダムに初期点がばらまかれ、その時間発展がプロットされます。このとき、平面の左から右へ横断する曲線が多く見られることでしょう。これらが「不変トーラス」です。不変トーラスは、Kが0の時に存在したトーラスが消えずに残ったものです。
一方、平面の上下には、楕円を描いたような曲線が見られることでしょう。これが「トーラスの島」であり、Kが0から増えたことによって新たに形成されたトーラスです。
ここで見たような、「不変トーラスの崩壊」と「トーラスの島の生成」を特徴付ける定理は、「Poincaré-Birkhoff の定理」と呼ばれます。

パラメータKを大きくして実験すると、「不変トーラス」はますます破壊され、「トーラスの島」がさらに増えていきます。Kを大きくしていったときに最後まで残る不変トーラスは「最終KAMトーラス(黄金トーラス)」などと呼ばれます。

一方、Kを大きくすると、曲線で表されない砂粒のような時間発展が観察されます。これは「カオスの海」と呼ばれるものです。このように、保存系のカオスでは「トーラスの島」と「カオスの海」とが特徴的に見られます。
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